プロローグ

　……あれから20年以上の月日が経った。　元号が変わり、世相が変わり、人々も変わった。　私の髪にも、随分と白い物が混ざっている。　長年世話になった、”警視庁公安部警視”という　身分とお別れする日も近い。　私は、来年の春から”警察学校校長の”赤坂衛先生となるのだ。　「この私が”先生”だってさ。捜査の前線からはリタイアだよ」　辞令を受けた日、私は娘の美雪に苦笑交じりで報告した。　私の新たな門出を、美雪は笑顔で祝福してくれた。　同じことを、雪絵――亡き私の妻に伝えたら、　彼女はどんな顔をしただろう。　やはり、娘のように優しい微笑みで応えてくれるような気がする。　何もかもが過去の物となり、すべては想い出の彼方。　………いや、違う。　想い出にしてはならない事件がある。眠らせてはならない真実がある。　雛見沢。怪死事件。大災害。古手梨花の予言と、彼女自身の変死。　もう一度、考えてみろ。そしてまた、　もう一度……あの惨劇に、挑め。